(C)のなすいま.
【カチンコチン】
カチンコチンコチンカツン。
ナノの世界で粒子の流れが活発になった。
コツン☆
慌て者同士が童謡の歌詞のように
体をぶつけて、そのまま引っ付いた。
寒い夜はこんな風にナノもお互いが
寄り添うんだね。
図体の大きい原子はその瞳も荒すぎて、
粗筋の物語しか作れない。
それでも世界が観たくって、今日も
大きな虫眼鏡と小さな虫眼鏡を交互に
覗き込んで
見たりする。
ナノは笑った。
君の肩に乗っかって、気分は世界一の
山登り。
君は首を振って振り切ろうとする。
吐く息から、吐く息からゲレンデの上の
ナノがスノボーしながら踊った。
君は冷えた体を
暖める方法を思い出す。
子供の頃にやった、おしくらまんじゅうゲーム。
氷点下になると水分は全て固まるよ。
君の息も、勢い余って、瞳から零れる滴も。
水に生まれたナノ達は、ガッチリとスクラム組んで
冬の寒さに凍えないように、おしくらまんじゅう
しながら春が来るのを待っている。
君の体の中にも住んでいるナノ。
何か言いたそうだったから、今日は静かに
聞いてみたよ。
「明日は今日より暖かくなりますように、ナノ。」
〜fin〜
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